疲れたなぁ…休みたいなぁ…特別に何かをしたわけじゃないのに、疲労感を覚えてしまうことってありますよね。
そんな“疲れ”の症状は、脳と身体が発信する“休め!”のサイン。現代人は、多忙を言い訳に、休息や睡眠を疎かにしてしまいがちですが、疲労を放っておくと、知らず知らずのうちに身体の中で何かしらの病気が進行していることも…
そうなる前に、疲労を回復する休息や睡眠の意味とその大切さについて、あらためて考え直してみませんか? 積極的に効率よく休むことでパフォーマンスがアップし、その結果ゆとりができれば、良いスパイラルにつながっていきます。
疲労回復のキーとなるのは有酸素運動!?
疲労した状態とは、仕事や日常生活に必要なエネルギーがなくなった状態。体力はもちろん、集中力や思考力、気力までもが低下・欠如してしまうことは、ご存知の通り。
そんな疲労を回復し、心身を正常な状態に戻してくれるのが「休息」です。
休息には、「消極的休息」と「積極的休息」の2種類があり、双方を上手に使い分けることが疲れた身体を効率的に回復するために重要になります。
消極的休息は、昼寝や睡眠のように体を動かさずじっとしている休息のこと。一方、積極的休息は、ウォーキングやヨガなどの有酸素運動で血液の循環を良くして、疲労物質である乳酸の分解をスムーズにし、疲労の回復を早めることを指します。
心身の疲労を効果的に回復させるなら、積極的休息が理想的。パーソナルトレーナーであるタマラ・グランド博士によると、積極的休息をとることで、筋肉痛の発生を遅らせたり、関節の使い過ぎによるケガを予防するなどの効果が見込めるそう。また、ストレスなどの精神的な疲労を取り除くのにも有効とされています。
究極の疲労回復は「睡眠」にあり!
皆さんもご存知の通り、一番手っ取り早く疲労回復効果を見込めるのが「睡眠」です。
睡眠が疲労回復につながるのは、眠ることで「成長ホルモン」の分泌が促進されるため。成長ホルモンには、運動や労働などで疲労・破損した身体の組織を修復・再生する働きがあります。“疲れがとれない”症状は、実は成長ホルモン不足が原因であることも多いのです。
成長ホルモンは、眠りに入って約1時間後のノンレム睡眠(深い眠り)のときに多く分泌されると言われています。眠りが浅いと分泌されにくくなってしまうので、しっかり分泌させるためには深い睡眠が不可欠です。
眠れないときは頭を冷やす!? 脳の温度を下げて眠りにつく
ところで「頭を冷やせばよく眠れる」という話を聞いたことはありませんか?
質のよい睡眠をとるのに大切な要素はいろいろありますが、そのひとつが「体温調節」です。体温調節機能の働きも睡眠に影響を及ぼすと言われています。しっかり休息をとるのに特に大切なのが、脳の温度を下げること。不眠症の患者は、脳の前頭葉がいつまでも活発に活動して温度が上がっているため、寝つきにくくなっていると考えられます。
この脳の温度と睡眠の関係について、ピッツバーグ大学の研究チームによる興味深い研究があります。
同チームは、「脳は入眠時に冷たい環境を好むので、不眠症患者は冷やした帽子をかぶって寝れば寝つきがよくなる」との仮説を立て、不眠症患者12人と非睡眠障害者12人を対象に、冷水が循環する特別仕様の帽子を被験者にかぶらせて入眠時間を測定しました。
すると「不眠症患者は約13分で眠りに入り、ベッドに横たわっていた時間の89%は眠っていた」との結果が出たそうです(ちなみに非睡眠障害者は入眠まで約16分、眠っている時間の割合は不眠症患者と同じ89%)。
となると、怒りなどで頭がカッカしている、寝つきがどうにも悪いというときは、「頭を冷やして」からベッドに横になるのが、質の良い睡眠をとるコツかもしれませんね。
疲れは知らず知らずのうちに蓄積されていくもの。疲労を感じたら、脳と身体から“休め!”のサインが出ています。そんなときは無理をせず、有酸素運動をしたり、頭をクールダウンするなど、しっかりと疲れを癒してあげましょう!
ストレス社会は“眠れない”ビジネスマン醸成の場
多くの不眠を抱えるビジネスマンを年代によってストレスの原因はさまざま。例えば新人なら社会のルールや立ち振る舞いに苦労し、管理職は、上司と部下の板挟みやマネジメントなど重圧のかかる仕事がストレスになりがちです。こうした状態が続くと、身体や心の疲労を感じにくい状態になるといいます。
「そのストレスを解消するうえで重要となるのが睡眠です。多くのビジネスマンはストレスによって眠れず、眠れないことで仕事のパフォーマンスが低下し、さらにストレスがたまるという、“眠れないスパイラル”に陥っています」
この負のスパイラルを断ち切るためには、一人ひとりが自分のストレスと向き合うとともに、睡眠への意識を高めることが必要不可欠とのこと。
質の高い睡眠には5つのメリットがある
忙しいから睡眠時間を確保するのが難しい…そんな意識を変えて欲しい、
「睡眠の質を高めると、仕事の効率は劇的に変わります。『仕事で成果を上げたいからこそ、睡眠を大切にする』という意識をしっかり持つことが大切です」
睡眠をとることには大きく5つのメリットが。
1.ストレス耐性を高める
2.脳の疲労を取り去る
3.メンタル疾患予防
4.生活習慣予防
5.集中力・モチベーションアップ
「良質な睡眠や睡眠時間の確保を意識すると、ポジティブな精神と健康な身体づくりの実現だけでなく、脳のオンオフの切り替えがスムーズになり仕事の能率が格段に向上します。それは企業にとっても、生産性の向上とともに、メンタル疾患による離職などの損失を予防できる大きなメリットがあります」
ついつい「仕事のために睡眠時間を削る」という発想になりがちな日本人。でも、仕事の効率が上がり、ストレスも軽減できるならば、睡眠を大切に考えるべきなのかも。